埼玉県で相続税の申告をするなら東松山市の関根盛敏税理士事務所まで
HOME>相続について

生前贈与のススメ

生前贈与のススメ
暦年課税制度
暦年課税制度の概要
生前に財産を贈与することで、相続税の対象となる財産を減少させることになり、その結果、相続税を減額させる効果があります。

【計算式】

(財産の価額-110万円)×税率-控除額=贈与税額
※1 年間110万円以内の贈与であれば贈与税の申告は不要
※2 税率・控除額
暦年課税制度の概要 贈与税は相続税の補完税 贈与税は相続税の補完税
生前贈与を非課税としてしまうと相続税の回避が簡単に行われてしまいます。そのため生前贈与を阻止するために、贈与税が創設されたという経緯があります。なるべく生前贈与をさせないように、相続税と比較して贈与税は税率が高く、基礎控除額は低く抑えられています。この贈与税の特徴を考慮して生前贈与を実行しないとかえって税負担が重くなってしまうこともあるので十分な検討が必要です。

 
贈与のメリット

生前贈与を実行することで、税制改正のリスクを回避できます

相続税は相続開始時の税法を適用して計算されます。今現在有効な相続対策でも毎年改正される税法に伴いその効果が全く見込めなくなるおそれが常にあるのです。しかし、生前に財産を贈与してしまえば、贈与税はその贈与時の税法の適用で計算され、その後は税制改正の影響を受けません。税制改正の影響を受けないという点において生前贈与は相続対策に実に効果的です。

財産の評価額が上昇するリスクを回避できます

将来的に評価額が上昇するような財産であれば、評価額が低い時期に贈与を実行することで相続税に影響が及ばないようにすることが可能です。

生前贈与加算の適用対象者以外の者への贈与

「相続等で財産を取得した者」が、亡くなった人から相続開始前3年以内に贈与により財産を取得していた場合には、その贈与時の価額で贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算するという「生前贈与加算」という規定があります。これは110万円以内の贈与税の基礎控除以内の贈与でも加算されてしまいます。相続が起きることを予測して生前に相続人に財産を贈与して相続税の課税逃れを防止するための規定です。しかし、相続開始前3年以内に贈与を受けた者であっても、「相続等で財産を取得していない者」にはこの規定の適用はありません。例えば、相続人でない孫(遺言でも財産をもらっていない)に対する祖父からの贈与は生前贈与加算の適用はありません。

孫への贈与孫への贈与

通常、財産は「父→子→孫」と流れていきます。父から子、子から孫と三代の間に2回相続が発生します。
父から孫へ生前に贈与を実行すれば、子の代を一代飛ばせるため1回分の税負担が軽減されます。
また、要件を満たせば生前贈与加算の適用もありません。注意点として、孫が幼く未成年者であるケースも考えられます。
この場合、孫の親権者である父母が法定代理人として贈与契約書に署名したり、財産の管理行為を行う必要があります。

贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上であることなど一定の要件を満たす配偶者に対して居住用不動産又は居住用不動産を取得するための資金を贈与した場合には、贈与税の計算上、最高2,000万円の控除を受けることができます。
この特例を受けて贈与された居住用財産等については、相続開始前3年以内の贈与であっても生前贈与加算の適用を受けません。
要するに、2,000万円までの居住用財産等が相続税も贈与税も課税されずに配偶者に移転できるのです。
注意点として、例え贈与税が課税されなくても、贈与税の配偶者控除の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書を提出する必要があります。
贈与のデメリット

累進税率が高く、基礎控除が少ない

上記したように、贈与税は相続税の補完税という性格上、相続税と比較して税率が高く、基礎控除額が低くなっています。
評価額が同じ財産について、相続税と贈与税のどちらかが課税されるとき、贈与税の税金の方が高くなります。
節税対策としての生前贈与の場合、贈与実行前と実行後での相続税と贈与税のトータルの税額を比較検討して実行する必要があります。
 

3年以内の生前贈与加算

上記したように、相続開始前3年以内の贈与については、生前贈与加算という規定があります。
生前の贈与について贈与税を納付しているときは、相続税の計算上、その贈与税額を控除することができます。
贈与すると有利な財産

将来値上がりする可能性のある財産

開発計画などがある土地や業績が良い上場株式、自社株など将来値上がりしそうな財産を評価額の低い時期に贈与で移転してしおけば、相続財産の増加を避けることができます。また、贈与後3年以内に相続が開始したとしても、生前贈与加算される財産の価額は贈与時の評価額となります。値上がり分は税負担の軽減となります。

 

収益性のある賃貸不動産

賃貸建物は自分で使用している建物より評価額が下がります。
自用建物 :固定資産税評価額
賃貸建物 :固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

時価が同じ不動産であれば、賃貸不動産を贈与した方が、上記の算式のとおり相続税評価額が低いため贈与税の負担は軽減できます。
また、当然のことですが、贈与後は、賃貸収入は財産をもらった人に帰属します。
相続が発生した場合にはその賃貸収入をもって相続税の納税資金の原資とすることができます。

現預金

現預金については、110万円の基礎控除額の範囲内であれば、贈与税も課税されることなく財産を移転することができます。
一方、不動産を贈与した場合、不動産取得税、登記に際し登録免許税及び司法書士への報酬、維持のための固定資産税等を負担することになります。
贈与する場合の留意点

贈与する場合の留意点 贈与の証拠を残しておくこと

贈与は財産をあげる人(贈与者)の「あげます」、財産をもらう人(受贈者)の「もらいます」という意思表示で成立します。書面による必要はなく、口頭でも成立します。
しかし、書面によらない場合、いつでも取消しが可能とされています。そこで、贈与の事実を明らかにするために贈与契約書を作成します。 また、金銭を贈与するときなどは、贈与者の預金口座から受贈者の預金口座へ振り替えて金銭の移動があったことの証拠を残しておきます。

贈与を受けた財産の管理は受贈者が行うこと

預貯金等の場合、贈与後は通帳や印鑑は受贈者が管理し、受贈者が自由にその預金を使用、処分できるようにしておく必要があります。
贈与者が通帳、印鑑を管理したままの状態ですと、単に名義を変更しただけで、実質的には贈与者の所有財産(名義預金)であると判断され、相続財産に含められてしまいます。

贈与税は受贈者が納付すること

贈与税は受贈者が納付するのが原則です(受贈者が資力を喪失しているときを除く)贈与者が贈与税を肩代わりして払ってしまうと、さらにその贈与税分の財産を贈与したものとみなされて贈与税がかかってしまいます。

多くの人に年数をかけて贈与すること

例えば、父から二人の子に毎年贈与税の非課税枠である基礎控除額の110万円の現金を10年間贈与します。
110万円×2人×10年=2.200万円の現金を移動することができます。
相続が3年間発生しなければ、生前贈与加算の適用もないわけですから、贈与税、相続税ともに負担はありません。
単純な方法ですが、その効果は絶大です。
相続対策は長期間で行うべきという良い例です。

 
相続時精算課税制度
制度趣旨 制度趣旨
日本銀行の発表によると、個人金融資産残高は1.400兆円を超えているそうで、この大半は高齢者層が所有していると言われています。
この金融資産を高齢者層から若年者層へ移転させることで住宅投資などを喚起し、経済の活性化を図るために税制面からの支援として創設されたのが、相続時精算課税制度です。
要するに、お金を使わないで貯めこんでいる高齢者から、使いたくてもお金のない若者にお金を移してモノを買わせ、経済を活性化させようというものです。
 
制度概要
・贈与者:65歳以上の父又は母
・受贈者:20歳以上の子
・贈与者ごと、受贈者ごとに相続時精算課税制度、暦年課税制度を選択できる
・特別控除:2.500万円
・税率:20%
・2.500万円以内の贈与でも要申告
・相続時に相続財産に加算
・贈与時に払っていた贈与税を相続税の計算上控除できる
・控除できない部分は還付される


2.500万円が非課税となるわけではありません。
相続時に精算課税対象財産を相続財産に加算し相続税を計算しなおして、贈与時に払っていた贈与税を相続税から控除します。
したがって、相続税がかからない人であれば、結果的には贈与税も相続税も負担がありません。相続税を前払いしている感覚です。

(例) 父から子に現金を相続時精算課税制度により贈与(1年目2,000万円、2年目1,000万円)
相続人は子のみであり、父にはこの合計3,000万円以外に財産は無い

1年目

2,000万円-2,500万円(特別控除)<0

2年目

1,000万円-(2,500万円-2,000万円)=500万円
500万円×20%=100万円(贈与税)

相続時

5,000万円+1,000万円×1人=6,000万円(相続税の基礎控除)
3,000万円-6,000万円<0 ∴相続税は0円
0円-100万円(贈与税)=△100万円(還付)


メリット

相続税がかからない場合は還付となる

相続時精算課税制度を選択すると、相続時にその財産を相続財産に加算して相続税額を計算することになります。相続税がかからない方であれば、本来相続によって財産が移転するところ、生前贈与によって早い時期に財産を後継者等に税負担なく移転させることができます。 仮に、贈与時に20%の贈与税を支払っていても、相続時に精算され還付されますので、結果的に贈与税相続税の負担はありません。

財産の評価額が上昇するリスクを回避できる

相続時精算課税制度は、贈与時の時価で相続時の精算が行われます。評価額が値上がりするような財産を早めに移転することで、税負担が抑えられます。

収益物件の贈与

収益不動産を親が所有し続けていると、賃貸収入が財産として蓄積され、相続財産が増加することになります。相続時精算課税制度を使って賃貸不動産を子供に移転すれば、賃貸収入が子供に蓄積され、不動産の移転と賃貸収入の移転の両方が図れます。

自社株の贈与

会社経営者が後継者に生前に相続時精算課税制度で自社株を贈与しておきます。 遺留分の問題が生じたとしても、贈与の事実は確定していますので、自社株を後継者に確実に取得させることができます。節税対策ではありませんが、残したい人に残したい財産を残すことが可能となります。ただ、遺留分についても考慮して後々争族とならないようにその他の対策を講じておくことが重要なのは言うまでもありません。

遺産分割による争族対策

遺言書を作成するまでもなく、相続時精算課税制度を利用し生前に財産を贈与することで、相続人に自分の意思で遺産分割をすることができます。この場合、2,500万円までは贈与税はかからず、超えた分については20%の税負担となり、さらに相続時に精算されます。
デメリット

生前に相続時精算課税制度により贈与した財産が値下がりした場合

相続税の計算時に相続財産に加算する精算課税制度対象財産は贈与時の時価で加算されます。贈与時よりも相続時においてその財産の時価が下落するような資産は、精算課税制度による贈与は避けた方が良いかもしれません。

暦年課税制度へ戻ることができない

相続時精算課税制度を一度選択すると一生涯相続時精算課税制度が適用されることになります。要するに、年間110万円の基礎控除をうけることができなくなるのです。 極端な例では、2.500万円の特別控除枠を全て使い切ってしまった後では、その贈与者から1万円のおこずかいをもらっても2.000円の贈与税がかかるということです。

小規模宅地等の特例の適用不可

相続時精算課税制度により贈与した小規模宅地等については、相続時に小規模宅地等の課税価格の特例を適用することができません。

物納対象財産からの除外

相続時精算課税制度により贈与した財産は、物納の対象とすることができません。

財産が滅失しても相続税の課税財産となる

暦年課税制度の場合、生前贈与された財産が、受贈者の故意過失によらないで滅失毀損したときは、その滅失毀損した部分は最初から贈与がなかったものとみなされます。特別受益の持戻しの対象となりません。
一方、相続時精算課税制度により贈与された財産は、受遺者の故意過失によらないで滅失毀損した場合でも、贈与時の評価額により相続財産に加算して相続税を計算することになります。
住宅取得等資金の贈与の特例
住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置の拡充

相続時精算課税制度の活用例
相続時精算課税制度の活用例 【親が子の借金を肩代わりした場合】

子が住宅ローン2000万円を支払えなくなったため、親が肩代わりして支払うこととします。
肩代わりして支払うことを「代位弁済」と言います。親が子の住宅ローンを代位弁済した場合、親は子に対して求償権を有することになります。求償権とは、「主たる債務者(子)が本来返済すべき借金を私(親)が立て替えて支払ったので、立替分を返してください」と請求できる権利のことです。

とはいっても、親族間ですので、通常、親は子に請求しないで求償権を放棄するでしょう。
すると、子は債務免除益という利益を得ているとして、債務相当金額の贈与を受けたことになります。
年間110万円を超える場合には、贈与税の対象となってきます。

今回のケースですと、債務免除益は2000万円となり、何もしないと暦年課税制度が適用されて子に対して以下の贈与税がかかります。

(2000万円-110万円)×50%-225万円=720万円

住宅ローンが支払えないから親に肩代わりしてもらっているわけですから、子が720万円の贈与税を負担することは困難でしょう。こういった事態を回避するために、相続時精算課税制度を利用します。

2000万円-2500万円<0

贈与税は0円となります。

親が相続税がかからない範囲内の資産であれば、結果として税負担なく子の借金の肩代わりをすることができます。
相続時精算課税制度創設の趣旨とは異なりますが、このように相続時精算課税制度を活用することで720万円の贈与税負担を回避することが可能となるわけです。